Rare Disease Day 2010報告書

イベント名:Rare Disease Day 2010(世界希少・難治性疾患の日)

開催日時:2010228日(日) 12:00~17:00

場所:東京ミッドタウン ホールB

主催:特定非営利活動法人 知的財産研究推進機構(PRIP Tokyo

協賛:ジェンザイム・ジャパン株式会社、ノーベルファーマ株式会社、株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、アンジェスMG株式会社

後援:厚生労働省、日本難病・疾病団体協議会(JPA)、National Organization for Rare DisordersNORD)、日本バイオテク協議会、日本製薬工業協会、東京大学 先端科学技術研究センター(RCAST, UT)

協力:新潟市美術館

開催プログラム

2010228日に、Rare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日)を日本で初めて開催いたしました。

Rare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日)は、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者さんの生活の質(QOL)の向上を目指して、スウェーデンで2008年から始まった活動です。 2009年には、世界各地の30カ国、2010年には36カ国が参加しています。ヨーロッパでは600以上の患者団体が参加し、メディアにも多く取り上げられました。また、アメリカでも、約200の患者団体をはじめ、NIH(国立衛生研究所)やFDA(食品医薬品局)の政府機関が参加しました。イベント当日には、各国にて講演会や患者団体の交流会、署名活動、国会議員とのディベート、政府への意見書の提出が行われました。

日本でもRare Disease Dayの目的に賛同し、毎年228日を世界希少・難治性疾患の日として、2010年から毎年開催を目指して実施することにいたしました。

事前の広報活動として、チラシ約5,000枚、ポスタは約100枚を、大学、研究機関、企業、小学校、病院、患者会、薬局、本企画関係団体などへ配布しました。また、ホームページ(Webアドレス挿入)を開設し、コミュニティサイトやメーリングリスト上での告知など、インターネット上での広報も行いました。

イベント当日の入場者数は約300名でした。当初の予定であった500名には届きませんでしたが、これは東京マラソンが同日に開催されたこと、また津波の影響で公共交通機関に遅延等のトラブルが生じていたことも一因であると考えます。しかし、本企画では、来場いただいた方々の多くが開催企画に積極的に取り組み、大いに楽しんでいただきました。その結果、一人当たりの滞在時間が1時間~2時間超と非常に長く、会場内には常時100~120名の参加者が滞在し、非常に盛況な会合となりました。また、当日は産経新聞、東京新聞、くらしとバイオ、日経BPTV番組企画会社など複数のメディアが来場し、マスメディアの注目を集めることに成功しました。

次に、開催された個別企画について、当日の様子を報告します。

1.ワールドカフェ(Act for Rare Disease)

【目的】

本企画は参加者およびオーディエンスの方に、「希少・難治性疾患の状況を良くするために,自分にできる行動は何だろうか?」と、改めて考えてもらう場を構築することを期待した企画です。希少・難治性疾患関連分野に日頃から関わっている患者・医師・支援団体・行政担当者・製薬企業・研究者など多種多様な立場の方に参加していただき、リラックスした雰囲気の中で自由に意見交換を行い、異なる立場の方の意見に耳を傾けることで、各参加者の今後の活動の一助となるような「気づき」が得られることを目的としました。

【概要】

開催当日は、事前に招待された参加者約20名が集まり、ワールドカフェ形式の自由な雰囲気の中、活発な会話が行われました。異なる立場・想いからの意見が行き交い、参加者からは自分とは異なる視点からの新たな気づきを得られたという声が数多く聞かれました。

それぞれのテーブルでは、以下のようなキーワードを中心に会話が進められました。

  • 当事者からの発信・それぞれの立場からの発信・患者さんのための発信
  • 意思の疎通、互いに歩み寄る・教育・国を動かすために、1人ひとりができることを積み上げていく
  • 情報パイプラインの整備・患者のための法整備・国の支援・社会的教育・リテラシー・不公平の是正
  • 患者さんは主人公になれる!・病とともに生きるための環境整備・情報ネットワークと人的ネットワーク

2.患者の生の声

【目的】

本企画は患者さんの実体験、日常生活、社会に望むこと等を心のままに話してもらう企画です。当事者の感情や気持ちに即した話題を通じて、来場者の希少・難治性疾患に対する印象、理解を深めてもらうことを狙いとしました。

【概要】

当日は以下の方々にご自身の体験や感じていることについて、それぞれ15分を目安に発表して頂きました。

・日本マルファン協会 代表理事 猪井佳子氏 ・全国筋無力症友の会 全国運営委員 前田元氏

・表皮水疱症友の会関東支部 代表 薄田たか子氏・アロペシアラボラトリー 代表理事 鳥居珠子氏

・遠位型ミオパチー患者会 運営委員 若宮有希氏

患者さんの発表内容は非常にまとまっており、持ち時間の15分を十分に活かしきった発表でした。全員の発表時間を合計すると1時間以上となりましたが、来場者の多くが患者さんの発表に真剣に耳を傾けており、途中で退席する人はほとんどいませんでした。その結果、参加者には希少・難治性疾患に関する強い印象が残すことができ、生の声を通じて現状を訴えることができました。

3.パネル展示セッション

【目的】

希少・難治性疾患を取り巻く環境、政策、新薬開発の現状を紹介することで、希少・難治性疾患に対する認知、理解を深めてもらうことを目的としました。また、協賛、後援団体から提供されたパネル等を展示することで、当該団体の活動に対する認知、理解を広げることも狙いの一つとしました。

【概要】

本企画では、希少・難治性疾患を取り巻く環境、政策、新薬開発の現状をパネルの展示によって紹介しました。また、協賛企業から提供頂いた遺伝子治療を紹介したパネル(アンジェスMG)、日本難病・疾病団体協議会の活動を紹介したパネル(JPA)を展示しました。

パネルスペースは入り口付近に設置したこともあり、開場後から常時多くの来場者がパネルを熱心に見ていました。今回の企画で希少・難治性疾患のことを初めて知ったという方から、既に識者であり高度に専門的な内容について質問される方まで、幅広い参加者の関心を引いていました。また、パネルの内容についてカメラで撮影される方や、パネルのデータを欲しいという声もあるなど、希少疾患に関する注目の高さを伺わせました。

4.キッズスペース)

【目的】

本企画は、Rare Disease Day来場者に、他のスペースを通じて感じたことを表現してもらうと同時に、その機会を通じて、今回のイベントがより記憶に残ることを目的としました。来場者の年齢層が多岐に渡ると予想されたため、年代を問わず来場者全員に本企画に参加してもらえるよう、以下の2つの表現方法を用意しました。

  • みんなの海:感じたことを気軽に表現し、その場にいる人と共有するためのスペース。
  • キッズスペース:みんなの海の延長として、子供が遊びながらお絵描きを通じて自由に表現するスペース。

【概要】

・みんなの海:来場者に、イベントに参加して感じたことを魚などの海の生き物を模したコメント用紙に記載してもらい、海の絵を背景にしたパネルに貼り、他人のコメントを見られるようにしました。コメント用紙の形状を海で生きる様々な生物に模すことで、希少・難治性疾患も個性の一つとして捉えられるようにという期待を込めました。また、他の参加者のコメントを見ることによって、本イベントに参加して感じたことを異なる視点からも見てもらう機会を提供しました。

・キッズスペース:海の絵の背景の壁にクレヨンなどで直接お絵描きやぬり絵をしてもらいました。また、落書きしたり遊んだりすることのできる段ボール製の家や自動車の模型も用意しました。子供と遊ぶスタッフを配置し、子供たちの自由な表現の場の手助けをしました。本スペースは、子供の表現の場であると共に、家族での来場者が参加しやすくなる効果も期待して設けました。

【結果・感想】

・みんなの海:順路的に最後のスペースであったため、イベント開始直後は人がいませんでしたが、開始30分後からスペースに立ち寄る来場者が増え始め、それ以降はコメントを書く来場者の姿が絶えず見られました。コメント用紙を前に何を書くのか考え、丁寧にコメントを書いている姿が印象的でした。また、コメントを書くだけでなく、海の生き物の形をした紙に色や模様をつける人も多く、「個性を表現する、理解する」という雰囲気が良く表現され、本企画の趣旨に沿った内容となりました。また、パネルに貼られたコメントを読む人の姿も見られました。

子供の来場者に関しては、当初キッズスペースの壁や模型への色塗りのみでの参加を想定していましたが、コメント用紙に色塗りをしたがる子供も多く、親子で座って書く姿が見られました。また、コメントだけでなく、切って遊ぶこともできるよう海の生き物を描いた用紙を用意し、子供に遊んでもらったことも、子供たちの大きな笑顔を呼びよせる結果となりました。

・キッズスペース:開始30分後から家族連れの来場者の子供が本スペースを訪れ、クレヨンで壁に絵を描き、装飾用に置いてあった風船などを使って遊んでいました。イベント開催中は終始子供がいなくなることはなく、楽しそうにお絵描きをしたり、段ボールの家や自動車で遊ぶ姿が見られたり、スタッフ2名が常時対応するような状態でした。

当日は、子供とのコミュニケーションに慣れたボランティアスタッフに手伝いをお願いしていましたが、彼女たちのおかげで、子供たちが本スペースに参加することの抵抗感が少なかったようです。また、当日用意した水で落ちるクレヨンも、保護者が子供に本スペース遊ぶことを許可する一因となりました。

5.カセットプラント

【目的】

本スペースの目的は、多くの人から共感を得られる同時代の芸術をRDDの入り口とすることによって、より一般の方の参加を促すこと、ならびに患者さんや一般参加者を含めた参加者全員が一流の芸術家とともに共に一つの作品を作り上げることです。関係者の間の壁をなくし、お互いが一体感や親近感を感じてもらうことを目的としました。

【概要】

カセットプラントは、日本を代表する現代芸術家のひとりである山口啓介氏の作品で、カセットケースに花と天然樹脂を封じ込めたものを、透明なアクリルケースやガラス面などに特殊な両面テープで貼り、積み重ねた作品です。

本作品は、コハクに封じ込められた動植物をイメージの源としており、種や大切なものを未来へ伝える方舟がイメージされています。花と樹脂が封じ込められえた個々のカセットも美しいが、それを積み重ねた作品は、また新たな美しさを表現しています。このことは、希少疾患一つ一つは小さくても患者さんがおりその意思が集まることで力を発揮するという本企画のコンセプトと対比すると、多くの共通点を見出すことができます。

また、本作品はワークショップという形でイベント参加者により作製することが可能であるだけでなく、作品の制作作業自体は容易な作業であるため、一般参加者はもとより、体に不自由を抱える患者さんでも広く参加できます。これらのことから、カセットプラントは本企画に適した芸術作品であるといえます。

当日は、イベント開催中を通して本企画参加者自身が生の花を使ってカセットプラントを作製するワークショップに加え、開場前に山口啓介氏監修のもと、メンバーや患者さんらにより事前に作製されたカセットプラントも大小作製し設置しました。

【感想】

大人から子供まで、そして患者さんから一般参加者まで、多くの方々に参加いただき作品を完成することができました。

できあがった作品は想像以上に美しく、会場の入り口やホールの中など、会場内のさまざまな場所に彩りを添えるとともに、参加者のみなさんが一体となるという本企画の成果を象徴するものとなったと感じられました。

Rare Disease Day 2010を振り返って・今後の展望

今回、日本で最初のRare Disease Day(世界希少・難治性疾患の日)イベントを開催することに成功致しました。これは一重に協賛団体、後援団体、協力団体をはじめとする数え切れない関係者の方々の多大な理解と協力によるものと、心の底より感謝致しております。今回の企画をきっかけに「希少・難治性疾患」という言葉が認知されていくことにつながれば、主催者としてこれ以上の喜びはございませんし、それこそがご協力頂いた方々の願いであるとも感じております。

しかしながら、来年以降も継続開催していかなければ、本イベントの本旨である「希少・難治性疾患の認知度向上」は全うできないと考えております。様々な縁がございまして、今年は弊NPOが主催させて頂きましたが、来年以降は弊NPOのみならず、患者会や患者支援団体等が主体となって、日本各地でRare Disease Dayに関わるイベントが開催されていくことを願っております。

開催スタッフ

赤羽、阿部、伊東、太田、小川、金石、國平、近藤、中村、毛利、山浦、山根(Genzyme Japan

生貝、石倉(大)、石倉(友)、井出、大野、起本、小田、加賀、金井、黒田、齋藤、寺田、新里、西村、長谷川、八谷、味元、森田、盛谷(PRIP Tokyo

(文責 味元風太(Rare Disease Day実行責任者)、西村由希子(姉御))


Rare Disease DayGlobal Sitehttp://www.rarediseaseday.org/

ワールドカフェ形式の討論に関しては、http://www.theworldcafe.com/を参照のこと。

山口啓介氏の作品カセットプラントについてはカセットプラントファクトリーで詳細をご覧頂けます。http://cpfactory.blog56.fc2.com/